第十章
そうして頬を染めながら肩を揺らすダーズを目にそうじゃないんだけど、と眉を寄せるカービィをまあまあとルーティは小声で宥める。
「じゃあ」
取り繕うように、
「これが終わったら出発するの?」
「そのつもりだよ?」
ダーズは笑顔で振り返った。……それにしても、彼の笑顔というのは何度も話しているように目は見開かれたまま口だけ大きく開いて笑うので張り付けられたようで不気味である。
「ゆっくりしてねぇ」
どう考えてもゆっくりできるような環境ではないがこれまでの振る舞いからこの手のツッコミは大して意味を為さないものと見て諦める。と──ダーズがふらっとその場を離れた。咄嗟に各位アイコンタクトを取って二手に分かれることにする。
「御供しますよ」
「? いらないよ?」
「そんなこと言わないでよダーズ様ぁ」
ダークファルコとダークフォックスは如何にもといったわざとらしい物言いでダーズの元へ。その一方でダークウルフは名残惜しそうに足を止めて振り返ってルーティ達を見ていたが視線の先にいたのは無論スピカである。呼び戻されるより先にまるで落ち込んだように大きな耳を垂れて小さく息を吐き出した後、走っていってしまったが。
「ほんっと忠犬だよね」
言いたいことを言ってくれた。
「どっかの誰かさんとは大違──ぃぎッ!」
話の途中でカービィが情けない声を上げたのはウルフが足を踏み付けたからである。あはは、と苦笑いを浮かべたルーティも巻き添えで睨みを利かされてしまう始末。やだなぁ僕は何も思っていませんって。……、八割くらいは。
「あの子は彼らに任せても良さそうだね」
ラディスが言えば空気が引き締まった。
「この辺りを見てみよう」