第十章
狂ったように笑う声と触手の擦れる音に正直気を衒いそうなものだった。本来であればすぐにでも彼の元へ駆け付けて触手から引き離し、救い出したいところではあるが目的を見失ってしまっては本末転倒である。先程スピカの件で反射的に声を上げてしまったダークウルフが今度ばかりは口を噤んでいるのがまさしくその証明。
今はまだその時ではない。
一度決めた以上は堪えなければ。
「一応聞くんだけど」
いつまでも続く笑い声を流石に煩わしいと思ったのかカービィが口を挟む。
「何やってんの?」
ダーズはぴたりと笑うのを止めると、
「あれはね。リサイクルだよ」
手を後ろで組みながら。
「お兄様との戦いでは頑張ってくれたけどおれは傷を治してあげられないからね。だからといって手負いじゃ戦力にもならないからああしてクレイジーハンドのエネルギーにしてるんだよ」
成る程、……それで。
やり取りを立ち聞きしながら納得をするのと同時にルーティは密かに目を逸らした。皆まで聞かずともエネルギーにされているのは見知った顔触れ基戦士なのだろう──それでもまだ冷静でいられるのはそれが本物ではなく戦士らを元にした複製だと踏んでいるからこそ。
もちろん本人の口から語られたものではないので推測の域を出ないが振る舞いの割に頭の回る彼が兄の手から掠め取った駒をみすみす手放すはずもないだろう……無論、そうであってほしいという願望がないわけではないが。
「いい趣味してるね」
「えへへ」
カービィが口角の引き攣るような苦々しい笑みを浮かべながら毒突くつもりで言ったが通じてないのやらダーズは照れくさそうに。
「ありがとぉ」