第十章
不気味な笑い声を厭に反響させながら。ダーズはゆっくりと後ろに下がって闇の中に溶け込むと今度はルーティの後ろから前触れもなく現れてがら空きの腕を掴んで抱き締めた。
「いいものを見せてあげる」
え、ちょっと──なんて言う間もなく。ぐいぐいと容赦なく腕を引かれる中でちらっと後ろを振り返ってみればちゃんと皆付いてきてくれているので安心した……おっと。遅れて説明するが他のダークシャドウの面々は影の中に潜んでいるのだ。
ぞろぞろと大勢引き連れて移動するよりは賢明な判断と言えるだろう。それに、いくらこの場所がダークシャドウの得意とする暗闇だとしても言ってみれば混沌と闇の化身ダーズの
「その子、は」
沈黙だけは避けたかった。
「何処で会ったの?」
果たして正しい道を歩いているのかさえ定かではない暗闇の中をダーズの誘導を頼りに歩きながらルーティは恐る恐る訊ねる。ダーズはうーん、と唸ってそのすぐ後ろを歩いて付いてくるスピカを横目に見ると、
「友達っていつの間にかなってるものだよ?」
話が噛み合わない。
「そ、そうじゃなくて」
「ルーティ」
不意に遮るように名前を呼んだのはいつの間にか足下にいたラディスだった。
「どうし」
言いかけて。耳に障る何かを引き摺る音蠢く音に思わず足を止めれば。
「どうしたの?」
ダーズはきょとんとして見上げる。
「君が……見せたいもの、って」
深い闇の奥にその正体を見つけるのは早かった。震える唇で問えばダーズはなんだそんなことかとばかりに明るい声音で。
「うんっ」
あっけらかんとした調子で応えるのだ。
「これのことだよ?」