第一章
緊張が走る。彼の持つ能力は最も異質であり対処法も把握にまで至っていない。また彼自身もひと言で言ってしまえば気まぐれで行動原理が読めない為に迂闊に刺激はできないのだ。
「、……」
タブーは小首を傾げた。一向に仕掛けてこない自分たちを目に警戒を解いたのか程なくして極彩色の羽根は光の粒子となり失せる。尚も目を見張っているとタブーは背後のマスターとクレイジーを振り返ってゆっくりと歩み出した。
「ふ、あはは! やっぱりこの世界は僕たちのことが大好きみたいだよね。じゃなきゃこんなタイミングでこいつが来るはずないんだしさ」
クレイジーは愉悦に浸るように目を細める。
「天が我々に味方をしたということか」
「当然だよね。神様なんだから」
タブーに攻撃の意思がなかったとしても造り主たる彼らが命じてしまえばとんでもないことになる。勝利に確信を得てくつくつと笑う彼らを目に判断を誤ったかと悔やんでいたが刹那。
「あづッ!」
情けない声が上がる。
「何するんだよ!」
「やくそくがちがう」
不意に幼い手が伸びてきたかと思うと額を指で弾かれて痛みに悶えるマスターとは反対に抗議するクレイジーにタブーは頬を膨らませて。
「けんかしないっていった」
「はぁぁぁぁぁ!?」
……どういうことだろう。
「マスター様。クレイジー様」
黒い羽根を散らせてゆっくりと舞い降りたのは彼らの配下たるダークピットである。
「お待たせしてしまい申し訳ありません」
「この現状を見てどの口利いてんだか」
「返す言葉もございません」
ダークピットは跪いて頭を垂れていたが此方の視線に気付くといつもの薄笑みを口元に浮かべながら掌をひらひらと振って。