第一章
歓声を遠く耳にしながら──瞼は開かれる。
舞う紙吹雪。カウントを刻む音。自分にとってホームステージである『ポケモンスタジアム』に程なく対戦相手として降り立ったのは赤帽を被ったヒゲの男。着地時ずり落ちそうになった帽子を被り直して向き合う。ステージを大きく囲むようにして設置された観客席とその観客はイメージによるものであって本物とは異なるが沸き立つ声も拍手も全てが壮観だった。
「一回戦敗退だったらどうしたものかと思っていたぞ?」
からかうようにそう言って笑う。
「去年までの僕だったらそうだったかも」
「はは。もうそんなに経つんだな」
背景の大画面に映し出される。
対戦者の名前は──
「ルーティ」
マリオはにやりと笑った。
「お前の父親が対戦相手だった時も俺は一度も容赦しなかった。今のお前なら分かるな?」
ルーティは頷いて返す。
「うん。──僕たちにとって戦うことはどんなゲームであれ生きることと同義だから」
ふっと満足げに笑みをこぼして。
「──そのとおり」
右手に火の玉を浮かべる。
「だからこそ。俺も全力で戦う」
ルーティは口角を吊り上げた。
「僕もだよ」
胸の高鳴りが止まらない。
「いくぞ、ルーティ!」
「負けないからね!──マリオ!」