第十章
ダーズは目を細めてにんまりと笑った。
「いいよぉ」
ぱっと姿を消したかと思うと今度こそダーズはルーティの正面に現れた。空間を経由して移動するこの能力はいずれ攻略しなければならないのだろうがそれにしたって彼の場合は不気味な空気感も相俟って寿命が縮まる感覚さえ──
「ルーティは?」
そんな呑気に考えている場合じゃなかった。
「えっと……僕も、……協力したくて」
「ほんとっ!?」
いずれ戦うことになるであろう相手とはいえ本心を偽って懐に入るというのはどうにも気が進まないなと思ってしまったばかりに口ごもってしまったがそれを聞いたダーズは分かりやすく表情を綻ばせて笑うと服の袖を伸ばして口元に運びながらぴょんとその場で跳ねた。
「えへへ……ルーティも分かってくれたんだぁ」
こうして笑っている分には可愛いんだけど……
「そういうことだから」
カービィは短く息を吐く。
「打倒キーラ頑張りましょーってことで」
「お兄様の話をしたな?」
次の瞬間である。
「はあぁっ!?」
いつの間に迫っていたのかそれとも暗闇の中であれば何処から現れるも消えるも自在なのか。兎角黒い触手の群れがカービィの四肢を捕らえて高く吊り上げたのだ。
「ちょっと名前出しただけじゃん!」
カービィは焦ったように声を上げる。
「ァアア……あはっ……あはっ」
ダーズはくしゃりと髪を掴んで頭を抱え込む。
「お兄様お兄様お兄様……ぼくはこんなに愛しているのにどうしてそんな言い方して」
「情緒不安定にも程があるでしょコイツ!」
触手は容赦なく締め上げてくる。
「カービィ、今っ──」
ラディスが頬に青い閃光を跳ねたが刹那。