第十章
「まさか」
ダークファルコは両手を振って否定する。
「一度はお慕いした上司です。我々はどちらかというと彼ら双神の手助けをしたいのですよ」
「てだすけ」
ダーズが言葉を繰り返す。
「離れ離れなんて可哀想でしょう?」
ダークファルコは指先を合わせながら。
「どうせ朽ち果てるなら兄弟一緒の方が幸せだと思いませんか?」
遠く。
心臓の鼓動する音がする。
「そっかぁ」
不安と緊張感が喉を締めて声を出せない。
「……そうだねぇ」
肝心な時に限って自分ときたら!
「そうだよね」
その声で緊張の糸が切れたかのように感じた。
「うんうん。ぼくその考え好きだなあ」
ダーズはようやくルーティを解放すると手を後ろで組みながらゆっくり後退するとくすくすと笑う声を響かせながら暗闇の中に溶け込むようにして消えた──が、その直後には空間を経由したのであろうダークファルコの目前に、それも髪を垂れながら逆さまになって顔を覗き込むようにして現れるのだから脅かされた側でもないのに声を上げそうになってしまう。
「道を開けるのは子分の役目だもんね?」
「そぉそ。でもあっちからお兄さん連れ出そうとしても眩しいからさぁ」
ダークフォックスは話に混ざり込む。
「ぶん殴られたら目ぇ覚ます繊細な馬鹿よりも俺たちの方が使い勝手いいと思うし……どぉ?」