第十章
言葉を間違ってはいけない。
慎重に。選ばなくては。
「、えっと」
あの時──クレイジーを連れ去ったのは確かに彼だがその姿は見当たらない。早急に居場所を特定したいところだがそれは現時点での正しい解ではないだろう。
「その」
洗脳された仲間の全てがキーラの配下となった訳ではない──最終的な彼の目的がキーラを殺めることであれば関係のない仲間たちの洗脳は解いてもらいたいところだが申し出たところでどう転ぶかは目に見えている。
「なぁに」
ルーティは口を噤んだ。
「──お初に御目に掛かります」
口を開いて進み出たのは。
「混沌と闇の化身、ダーズ様」
ダーズはきょとんとして首を傾げた。
「……様?」
「これはこれは」
ダークファルコは右手を胸に添えると。
「申し遅れました」
人当たりの良い物柔らかな笑みを湛えながら。
「我々はダークシャドウ──悪辣で傲慢な双神によって生み出された人型兵器です」
ルーティは気付かれないようにちらっとダーズを横目に見た。心配を他所に今のところは大人しく聞いてくれているようだ。
「影虫と呼ばれる特殊な生き物を使って形成されたこの体は光を浴びれば容易く火傷を負い、果ては焼け爛れるほどに脆い──そんな自分たちにしてみれば混沌と闇を使役する貴方さまこそ敬称を付けて崇めるに相応しいと判断いたしましたので勝手ながらそう呼ばせていただきました」
きらきらと。エフェクトの眩しい満面の笑みで。
「以後、お見知り置きを」