第十章
来ましたよ、って……、え?
「──!」
ぐさぐさと突き刺さる棘のような視線。
猛烈な寒気と緊張感。
「ばぁ」
そういえば。
初めて会った時もこんな感じだった気がする。
「会いにきてくれたの?」
今度は正面ではなく、背後から。幼く窺える声は忘れるはずも。するりと脇の下を潜って胸板に回された手のひらは冷たいというよりも温度を感じない。ほんの一瞬反射的に頬に青い閃光が走ってしまったが気付かれなかっただろうか。
「わぁ」
そんな心中など知る由もなくダーズは相変わらずルーティに後ろから抱きつきながら。
「友達も連れてきてくれたんだ」
息の詰まるような空気の中。
「あれぇ」
ダーズは小首を傾げる。
「お前……元に戻っちゃったの?」
視線の先には──ウルフの姿があった。
「そっかぁ」
機嫌の良し悪しを計れない一定のトーン。それなのに言い知れない何かが体の内側を静かに這うような不快感が硬直を解くことを許してくれない。ルーティは視線を動かしてカービィとラディスを見た。刺激をするなとばかりに静かに頷く二人に息を殺しながら小さく頷いて返せば。
「それで」
ダーズは知らず反対に首を傾けて問いかける。
「誰に。なんの用事?」