第十章
それはそう、……分かってるんだけど!
「いーのいーの気にしなくて」
一部始終を見ていたカービィは膨れっ面になっているルーティの背中をぽんと叩いて肩を組むと。
「ダークの方のファルコがルーティに絡んでた時すっごい目で見てたんだから」
先を歩いていたウルフが石化基硬直した。
「ありゃー間違いなく嫉妬」
銃声。
「さっさと歩けッ!」
顔を赤くして牙を剥き出しに……これほどまでに分かりやすい反応があっただろうか。
「は、蜂の巣になるかと思ったよ」
一方でルーティの足下を何の気なしに歩いていたラディスは巻き込みで地面に撃ち込まれた銃弾の跡に思わず冷や汗。
「その体で死んだらどうなるんだろうね」
「怖いことを言わないでくれ」
「真面目な話してんの」
「あはは……」
苦笑いしか出てこない。
「それにしても」
カービィはパッと離れて話を切り替える。
「やっぱこういう所ってダークシャドウにとって居心地よかったりすんの?」
前述の通り──肌寒さすら感じる冷たい空気の充満するその場所はまさしく漆黒と表現するに相応しい暗く深い闇が余すことなく何処までも際限なく広がっている。地面に穴があれば知らずに落ちてしまうであろう暗闇だ、影虫で形成された体であるダークシャドウはどう感じているのだろう。
「率直に申し上げて気分が悪いですね」
「そぉそ。ちょー不気味だし気持ちわりー」
暗闇にも良し悪しがあるらしい。
「そ、そうなんだ……?」
分からないものである。
「そうそう」
ダークファルコはにこやかに。
「不快感の要因は他にもありそうですね」
徐に視線を遣りながら。
「来ましたよ」