第九章
ダークシャドウって意外と真面目なんだなあ……いやでも確かにリンクだって同じことをされたら怒るよなぁ……なんて茶番はさておき。
「げっ、睨まれてる」
他のダークシャドウの刺々しい視線を受けたピットはぎくりと肩を跳ねると急いでパルテナの元へ駆け付けた。側に居たブラピは目が合うとふんと鼻を鳴らしていつもの態度。
「心配性はどっちだか」
「おや。根に持つタイプですか」
「根に持ってるのはそっちだろうが」
「お互い様ですよ」
ダークファルコは笑う。
「俺たちが先に行った隙に好き勝手探られちゃあたまらねぇからな」
剣を肩に担ぎながらぶっきらぼうに言い放ったのはダークリンクである。それだけ彼らにとって何をどうしようとフォーエス部隊である限り信頼に値しないということなのだろう。
「行きましょう」
流石にこれ以上は茶番を続けるべきではないと判断したのであろうパルテナが杖を軽やかに振るうと彼女自身とピットとブラピの体の表面に青白い光が灯った。恐らく空間転移を使ってこの場所から移動するつもりなのだろう……じっと見つめるその視線に気付いたらしいパルテナはルーティを振り返ると目を細めてにっこりと。
「……信じるのは得意ですか?」
ルーティはきょとんとして目を丸くする。
「う、うん……?」
「そうですか」
何だろうと疑問を抱いたが直後パルテナは微笑を湛えながら意味深に。
「……気を付けてくださいね」
神の忠告ほど恐ろしいものはない。
「そんなに別れるのが惜しいならそっち行ってもいいんスよぉ」
ルーティは慌てて振り返る。
「い、今行くから!」
そうして。
僕たちはそれぞれの舞台へと踏み出す。
「さあ。急ぎましょうか」
パルテナは呟いた。
「ちょっとだけ時間が押しているので」