第九章
生まれた静寂に溜め息がひとつ。
「熱くなりやがって」
焼け石に水とはまた違うが火を冷ますように水を差すが如く呟いたのはウルフだった。ともなれば我に返ったのかルーティは即座に座り直しながら思わず苦笑い。ダークウルフはその様子に目を丸くしていたがふっと笑みを零して憂いを抱いた。密かに重ねたのだろう。
「さあ」
気持ちを切り替えましょうとばかりに手のひらを打って合わせてパルテナが口を開く。
「話は纏まったみたいですし早速表の世界に戻りましょうか」
音や声が戻ってくる。
「敵軍と馴れ合いやがって」
「心配性ですね。頼まれたってあなた方とは馴れ合いませんよ」
毒突くように吐き捨てればこれである。声を荒げて噛み付き兼ねないブラピを慌てて羽交締めにするピットを余所に軽率に堪忍袋の緒を鋏で切って遊んだその張本人のダークファルコはくすくす。ついでにダークフォックスもけらけら。
「さっき起きたばかりなのにもう大丈夫なの?」
慌てて席を立ちながらルーティが訊ねるとダークウルフは「ああ」と返して、
「全快するまで途中覚醒しないようにカプセルにロックを掛けていたからな」
だから騒いでも起きなかったのか。
「ルーティ」
呼んだのはラディスだった。床からテーブルの上に飛び乗ったかと思えばそれをバネに飛び込んでくるのだからもう随分とその体の扱いにも慣れたものと思われる。ルーティが胸に抱き止めながら怪訝そうな視線を返せば。
「最後の切り札というのは?」
おっと。
「タブーのことだよ。ええっと、……」