第九章
大打撃を受けた過去──ルーティの脳裏に映し出されたのは洗脳されていたが故の犯行とはいえX部隊を引き裂く為だけにフォーエス部隊をコピーした新規のダークシャドウの一員を殺めて虚偽を仕立て上げた生々しいばかりの残酷な記憶。
ダークウルフの話した通り敵対しているという点に関しては此方も同じことだが今だって眉を顰めてしまう確かなそれは時を重ねど許されたものではない。恨んでいないわけじゃないと濁してはくれたが膝の上で握られた拳に一瞬力が込められるのをルーティは見逃さなかった。それだけに──視線を落とした上で目を逸らしてしまった。
「確かに」
僅かな空気の澱みを感じ取ったのか否か。静かに口を開いたのはパルテナである。
「私たちの隊長が後々"黒猫"の手を借りたとも知れば卒倒するでしょうね」
「黒猫ぉ?」
「物の例えが分からない人ですね」
顔を顰めるダークフォックスにダークファルコが呆れたように小さく息を吐く。
「黒猫は不幸を手招くその象徴でしょう?」
「猫かわいーじゃん」
「そうですね」
理解させるのは諦めたらしい。
「ふふ。ご心配なく」
何処となく気まずくてそろそろと視線を向けるも言葉が見つからないでいるルーティにパルテナは安心させるように優しく笑いかけながら。
「既に策は講じていますよ」
ルーティは疑問符を浮かべる。
「その為の──」
「おい」
咎めるようにブラピがひと言だけ言ってのけるとパルテナは「あらあら」と笑って口元にわざとらしく手のひらを置いた。二人のやり取りに疑問符が飛び交うばかりのルーティだったがそれ以上は触れてくれないままパルテナは笑みを零す。
「……あなた方も同じでしょう?」
ダークウルフは黙っている。
「ゲーム中、どうにもならない事態に陥った際に止むを得ずリセットボタンを押すように。最後の切り札は残されている」
パルテナは気にも留めない様子で。
「双神はここまでの事態をあなた方だけでは解決までに至らないものと見越している。だからこそ"敢えて"その場では戦力として残さずに外界の影響の及ばない
全ては──
「最後の切り札覚醒までの時間を稼がせる為に」