第九章
ね、と囁くように言って意味深に視線を遣った先にはダークウルフの姿があった。その当人は顎に手を添えながら物思いに耽っている様子だったが遅れて視線に気付くと「あ、ああ」と何やら煮え切らない返事をした後に咳払いして。
「……分かった」
ルーティは表情をぱっと明るくする。
「元々俺たちもこの体が回復したら外の世界に出向こうと思っていたところだ。それで戦況を理解している人間が味方に付いてくれるというのならこれほど心強いことはない……」
思っていた以上の良好な反応にルーティも思わず身を乗り出すようにしながら、
「っじゃあ、」
なんて。
こういうものは。大抵が上手くいかないものだと相場が決まっているのだ。
「──ただし」
ダークウルフは言葉を阻むように。
「俺たちダークシャドウが自我を取り戻すための手助けをするのは」
ひと呼吸置いてからハッキリと。
「……X部隊の連中だけだ」
もう既に腰を半分浮かせていたルーティは途端にすとんと落とされたように椅子に座りながら、
「な、なんで」
愕然とした面持ちで。
「意地悪で話しているんじゃない」
ダークウルフは眉を顰めながら。
「確かに──俺たちダークシャドウは正義連中のお陰で大打撃を受けた過去がある。恨んでいないわけじゃない」
でも。
「敵対しているからという理由だけならお前たちだって該当している」
これは。
「……双方の意思を尊重した上での結論だ」