第九章
媚を売る、ではどうにも聞こえが悪いが──ルーティは暫く押し黙った後観念したように頷いた。
「ダーズがキーラのことを憎んで殺そうと企んでいることは知ってるでしょ」
何やら言い返そうとして口を開きかけたカービィだったが何せ手詰まりといった状況だ。直ぐさまばつが悪そうに眉を寄せながら頭の後ろを乱雑に掻くことでどうにか言葉を呑み込んでくれた。
「それは……分かってるんだけどさ……」
言いたいことはもちろん分かっているのだ。付け入るつもりでいるその相手は曲がりなりにも神の枠を外れない存在。危惧している事態が起こった際のリスクがあまりにも重すぎる──
「闇と混沌の化身だっけ」
「逆ですよ」
「どっちも変わんないじゃん」
さらっとダークファルコに突っ込まれつつダークフォックスは目の前のテーブルに頬杖を付く。
「上手く出し抜けるんスかぁ?」
「、えっと」
それを聞かれるとルーティは何故やら自分からは言いづらそうにウルフを見上げた。
「言やぁいいじゃねえか」
視線を受けたウルフは至極くだらなそうに。
「自分がヤツに気に入られてるって」
口を借りて語るような形とはなってしまったがそれが事実とはいえ改めて言われると気恥ずかしいものがあった。あわわ、とルーティが反射的か否か微かに頬を染めて慌てるのも構わず興味を持った様子のダークファルコは「成る程」と顎に指の背を添えながら微笑を浮かべる。
「騙し討ちですか。いいですねえ」
……、相変わらずの言い草ではあるが。
「素質がありますよ」