第九章
宛てはあれど道は無く。その目標物が近いのかはたまた遠いのか分かるはずもなければ途方も無く──かと思いきや正面に広がっていた深いばかりの闇が揺らいで姿形を成すのだからこの亜空間という場所は謎に満ちている。
「着きましたね」
いつもの口調でそうは言ったがルーティはパルテナを振り返れなかった。普段敵対しているという点に関しては自分たちも同じだが彼ら正義部隊は程度というものが異なる。
「おい」
ブラピが言うとピットは「いやぁ」と言って苦笑を浮かべながら頬を人差し指で掻いた。ご覧の通り納得はしていない様子だったが彼自身もパルテナの表情を窺ったのか否か小さく舌を打つとそれ以上は何も言わなかった。
さて──ルーティ達の前に立ちはだかっていたのは一言で表すなら黒塗りの屋敷である。それも表の世界にあるエックス邸によく似た作りの──というのは至極当然の話でこの建物は見た目だけでなく内部の間取りもただ単純に反転しただけなのだとか何とか……どうりでスピカ率いるダークシャドウがたまの気まぐれでエックス邸を訪れても迷子にだけはならない訳である。
「す、……すみませーん」
両開きの扉を拳で叩いてはみたがこれまた当然のように返事もなければ気配も窺えない。渋々とルーティは取っ手に手を掛けると意を決して押し開いた。とはいえそれも遠慮がちの半開きで顔色を窺うかのようにこそこそと。
「誰もいないのか?」
カービィの腕の中からラディスが訊ねたがまさかそんなはずは。了承もなく勝手に入るというのはいくら本来は敵対している相手とはいえ何となく憚られるものがあるが今回ばかりは致し方ないと見てルーティは首を横に振って応える。
「……入ってみよう」