第九章
ピットは宙ぶらりんになっていたルーティの体を引き上げると安堵の息をついた。しかしながら戦車自体広いわけではないためウルフまで乗り込むと決して快適ともいえない空間となってしまったがこればかりは文句を言っていられない。
「どうして、」
「説明は後だッ!」
返したのはブラピだった。それというのもこれまたいつの間に呼び出したのやらアーウィンに乗り込んだフォックスとファルコがレーザーを撃ち込みながら追尾してきていたからである。右へ左へと躱しているようで揺さぶられるばかり、何せ相手はあのやとわれ遊撃隊スターフォックスのリーダーとそのエースパイロット、案の定被弾は免れられず──それでも尚闘志の灯は失せず手綱を強く握って操るブラピが鋭く睨み付けた先には深く渦巻く空間の裂け目の姿があった。
「、あれは」
「ブラピ、早く!」
「分かってる!」
退路を用意していた様子のパルテナと一足早く到着していたカービィはその渦巻く空間の裂け目の両端で浮遊しながら待機している。皆まで説明されずとも見覚えのある光景に全てを察してルーティは振り返った。キーラの光に毒されたかつての仲間たちはもうすぐそこまで迫っている。
「……必ず、元に戻すから」
胸に秘めた想いを口にしながら。
「絶対に戻ってくるから!」
やがて。
空間の裂け目の奥へ駆け抜ける光の戦車に続きパルテナとカービィが飛び込めば大きく開いた口を閉ざすように空間の裂け目は跡形もなく。
「……逃げたか」
コックピットの中でフォックスは目を細める。
「どうする?」
「キーラ様が心配だ」
どうせ何も出来やしないのだから。
「引き上げよう」