第九章



「……ピット!」

ルーティが上体を起こしながら叫ぶとピットは力強く手綱を引いて切り返してきた。とはいえ流石は光の戦車だのと叫んでいただけあってあまりに速い──周囲を蹴散らす為だけに参じた筈はないのだと分かっていたところで残念なことにそれに乗り込むタイミングが掴めない。

「させませんよ!」

もはや振り回されるばかりのピットに狙いを定めるゼルダやサムスの邪魔立てをするべく上空からパルテナが光の矢の雨を見舞った。その隙に混戦を抜けてきた様子のウルフがルーティの元へ駆け付けて腕を掴んで引っ張り起こしたが直後。

「貸せッ!」

聞き覚えのある声がもうひとつ。

「……ブラピ!」
「ブラピって言うな!」

──彼も正気を取り戻していたのか!

安堵している間に一緒に戦車に乗り込んでいたらしいブラピはピットから無理矢理に手綱を奪うと手荒に引いて操った。それにより二匹のユニコーンは前脚を持ち上げていなないたかと思うと方向転換して急速直下。タイミングを見計らって跳び上がるウルフに思わず気を取られていればルーティの体は伸ばされたピットの手に攫われて。

「父さんっ!」

声を上げたが心配は無用というものだった。

「僕を忘れてもらっちゃ困るよ!」

空──ではなく地上から。今度はカービィが囲う面々を剣戟で蹴散らしながら飛び出してきたかと思うとそのままラディスの体を掬い上げて地面を蹴り出し飛び上がったのである。

「カービィ!」

声を上げたラディスの視線の先には黒い影──今の今まで剣を交えていたのにも関わらず尚も飽き足らないのやら蝙蝠の翼を背中に広げて追尾するメタナイトを振り返るなりカービィは眉を寄せると、欲しければくれてやるとばかりに自身のこめかみに指先を触れることでコピー能力を解いてその証たる星形の塊を投擲。メタナイトが剣を薙ぎ払い両断するのを見送った後で。

「普段はこんなに構ってくれないくせにさっ!」
 
 
7/27ページ
スキ