第九章



暫く走れば森なのか林なのか兎角木々の茂っていたその場所から脱することに成功した。一体何だったんだと浅く息を跳ねながら膝に手を付いて項垂れるルーティだったが直後地響きすら伝わせる爆発音を聞いて振り返る。

「マスター、クレイジー……」

彼らが本物じゃないのだとしても思わずそんな声が漏れてしまう。目を奪われるルーティを差し置いてウルフは辺りを見回した。彼にしてみれば正気に戻ってからお目に掛かるこの世界の変化こそ理解が追い付かないものだろう。

「おい」

ウルフが声を掛けるとルーティは振り返った。

「手短かに説明しろ」

眉を寄せて。

「この世界に何が起こってやがる」


ルーティは現状をゆっくりと説明した。

各所に点在している光は思念体スピリットでありその正体は体を失った生き物であるということ。あの時キーラの光に呑まれた仲間達は洗脳にかけられているものの無事であるということ。

この世界は現在キーラの光の力によって時間の流れを逆行しており凡そ数千年前の世界であるということ。それは新たな神に成ることを目的としていたキーラにとって好都合であるということ──けれど光の力を酷使した影響か否か、混沌と闇の化身と称される双子の弟のダーズを呼び起こしてしまったということ。

ダーズはキーラを酷く憎んでおり一部の戦士ファイターをキーラの手の内から掠め取って自分の勢力とした上で戦いを挑んでいるということ。その争いに巻き込まれたマスターとクレイジーも駒に加えられてしまい事態は絶望的であるということ……


「手短かにっつっただろ」

ウルフが言うとルーティはぎくりとした。

「で、ですよね」
「大体状況は読めた」

ラディスをじろりと見下ろして。

「……そいつがテメェの親父だってことも」
 
 
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