第九章



マスター、いや──偽物のマスター達は隙を縫うようにして順に攻撃を仕掛けてきた。蹴りを躱して拳を受け流し次の個体は回し蹴りで往なして振り向きざま両手を重ねて翳して襲いかかってきた個体を電撃によって弾き飛ばす。こうして実際に相手にしてみると本物と違って創造の力を駆使してこないことはもちろん攻撃の一つ一つが単調で見え透いている──でもどうしてこんなことを?

「っ……切りがないな!」

応戦に励んでいたラディスが後方に飛び退いてから言うと同じタイミングで攻撃を中断して後退して背中合わせになったルーティとウルフは尻目で視線を交わして小さく頷いた。

「一旦引こう──」


次の瞬間。


「うわっ!?」

不意に何かが上空から勢いよく降ってきて着地すると同時に土埃が舞い上がった。幸いにも土埃はすぐさま晴れてルーティが構えていた腕を解けば見覚えのある赤い髪の少年が横切る。

「く、クレイジー……!?」

今度現れたのはなんとクレイジーハンドの群れである。よく見れば彼らもまたワインレッドの瞳を縁取るようにして紫色の光を灯しており、加えて此方にも目もくれず偽物のマスター達に向かって攻撃を繰り出していく。

「……!」

その攻撃というのも情け容赦なく一撃で受けた箇所が変形したり弾き飛んでしまう程の威力で本物の彼らが愛し合っている様子を知っているからこそ表情を歪めた。かといって止める術もなければ関わるべきではない気もする。

「ルーティ」

硬直を解くようにラディスが言った。

「ここを離れよう」
 
 
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