第八章
「、!」
現れたのは。
「……え?」
ルーティがそうも素っ頓狂な声を出したのも言うまでもない話だろう。……前髪を左に流した青色の髪にコバルトブルーの瞳。左腕は半ばからばっさりと切り落とされたかのようで代わりに包帯をぐるぐると巻かれているが大怪我などの類いではなく過去望んでそうしただけの姿。
そんな特徴的な姿を見間違えるはずもない。
「マスター……?」
希望の象徴とも言うべき創造神である彼が今この場に居合わせてはいけない相手だということは十二分に理解していた。……だって。
彼は、あの時。
光の化身キーラに──
「様子が違ぇな」
ウルフがはっきりと言うとルーティは弾かれるようにして現実に引き戻された。何か攻撃を仕掛けてくるような様子はないものの終始無言で此方を見つめる姿は不気味ささえ窺える。それこそ自他共に認めるような口から先に生まれたかのように舌の回るひとだというのに──
「る、ルーティ!」
ラディスの声に振り返ってみれば。
「……え!?」
マスターがふたり──!?
「どうなっていやがる」
まさか此方の思考が追い付くのを律儀に待ってくれるはずもなく茂みや岩陰からぞろぞろと──事情を知らないウルフにしてみればその様子こそ違いは見られないもののルーティやラディス以上に混乱していたことだろう。
「ぼ……僕にも何が何だか」
もしやこれもキーラの力なのだろうか。
「参ったな」
ラディスは苦笑いを浮かべる。
「どうせ感動の再会を果たすなら話の通じる相手の方がよかったよ」
希望の蜘蛛の糸を掴んだ先。
光に導かれた先の世界。
あれよあれよと言う間にその群れに囲まれて。三人は気を休める暇もなく今度緊張の糸を張り詰めながら静かに息を呑むのだった──