第八章
状況を整理したい。整理させてほしい。
謎の空間の中で再会したその人は混沌と闇の力に侵され何度名前を呼んでも叫んでも訴えかけてもその声が届くことはなかった。それこそ最後まで──例えるなら野良犬のように激しく暴れて抵抗を示しながら元の心を取り戻すことはなく。それでも、……それでも五体満足で無事で居てくれたことに安堵していたのに。
「ウルフ」
瞳の色が紅色に変わっている。
「ウルフ」
元に戻っている。
「う」
「五月蝿い」
拳骨。
「いっだぁ!」
この痛みも最早懐かしい。
「……あはは」
ルーティは頭を抱えながら笑った。
「ウルフだぁ……」
手刀に拳骨と二連撃を与えたにも関わらず文句よりも先に笑みをこぼすルーティに一瞬気味の悪ささえ感じだがウルフ本人もまたその状況を察していた。あの時、キーラの光に呑み込まれた自分がどうなってしまったのか──目の前で何故か幸せそうに笑っているパートナーにどれだけの心配をかけて不安感まで与えてしまったのか。
「……おう」
自然と表情を綻ばせて応える。
「ただい」
「よかった!」
遮るように声がひとつ。
「二人とも目が覚めたんだな!」