第八章



……何が起こったのだろう。

不運にも手を滑らせたばかりに真っ黒な空間から真っ白な世界へと落ちていく中無我夢中で父とパートナーの両方を引き寄せて抱き締めながら眩いばかりの光に何もかも包み込まれて、それから。


、死んでしまった?

いやまさか。そうでなければあれやこれやと考えられる意識があるはずもない。死後の世界がどうあるかなんて知る由もないけど少なくともこうもはっきりとしたものではないはず。


ルーティ。


呼ぶ声が遠く聞こえる。僕はまた寝坊して──


「起きろ」
「どぁはっ!?」


夢現の境を彷徨う中での脳天手刀とは。

いくら何でも目覚めが悪すぎる──


「え」


……鳥の囀り。草木を撫ぜる風の音。

膝蓋腱反射かのように飛び起きても尚現実が呑み込めないでいたのはそれのせいではない。確かに何故あの果てのない真っ暗闇の空間から解放されて元の世界に戻ってきているのか気になるところだがそれよりも。何よりも。

「う、」

ルーティは震える唇をゆっくりと開いた。

「ウルフ……?」
 
 
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