第一章
幾つもの黒い魔方陣が展開された。大小異なるそれらは宛ら時計のように針を刻んでいくと同時期に天を差して──刹那それぞれの魔方陣の中央から先端に鋭利な鏃を携えた漆黒の光線が放たれる。生命体であるかのように畝るそれは空中に留まっていた双子軍師に狙いを定めて。
「……!」
爆発音が響いた。
「──遅すぎだぜ!」
クレイジーは僅かに瞳孔を開く。
黒煙を突き破って現れたのは地上のスネークがミサイルランチャーから撃ち出した弾をサーフボードかの如く乗りこなすソニックだった。
程なく着弾したミサイルが爆風を巻き起こすも寸前に蹴り出して飛び降りていたらしく爆煙を突き抜けて奇襲。小さく舌を打つクレイジーと真っ向から肉眼で追えぬ速度の肉弾戦。蹴りが頬をようやく掠めたと思えばその足首を掴まれ投げ飛ばされてしまう、──が。
「よぉ」
振り向き様に重い拳の一撃を受け止めて。
「クソ餓鬼」
ウルフは低い声で笑う。
「政府の首輪付きが僕を満足させようって?」
直後飛んできた蹴りを尻目に障壁の展開により弾くと即座に空間転移によって距離を取り獣のような唸り声を上げてウルフを睨みつける。
「上等だよ。──ブッ壊してやる!」