第八章



ばちばちと火花を散らすような激しい鳴き声を上げて最大出力の電撃が放たれる──無論巻き込まれないはずもなく思うより悲痛な声を上げるウルフの腕を引き続き強く掴んで逃がさないようにしながら電気を流し込めば目の前の彼ではなくこれまで居た空間そのものに思わぬ変化が生じた。

「、!」

事態に逸早く気付いたのはラディスである。大きく震え出したのは地面だけではない充満する空気も何も全てだった。四つ足で何とか踏み堪えながら不審な音に足下を見れば何処が出発点なのか分からないが兎角大きな亀裂が入っていて──隙間から窺えたのはこれまで居た空間に比べてみれば遥かに眩しい真っ白な世界。地面は誰を待つはずもなく亀裂に従って口を開いていく。

「まずい──崩れるぞ!」

ラディスが叫ぶと流石のルーティも事態に気付いたのか強い感電によってタイミングよく横たわるウルフの下から抜け出ると立ち上がろうとした。けれど地面の揺れがそれを見逃さずバランスを崩させた上で足場を崩壊させる。

「ルーティ!」


一際大きな声でラディスが叫んだ時には遅く。

ルーティの体は。


「、え」

不意に腕を掴まれた──かと思えば強い力で引き戻されて体ごと投げられる。

「ウルフ……」

行動に起こしたのは紛れもなく彼だった。

洗脳が解けたのかどうか分からないがそれでも左眼には変わらずアメジストのような深い紫の光が宿っていて。全てがスローモーションに映り込む中相変わらず見た目に感情らしいものは窺えないまま自分と入れ替わって落ちていく。


お前だけは助けてあげる。


「っ……そんなの」
 
 
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