第八章
地面を蹴り出したと同時に大きく振りかぶられたその腕を振り下ろされれば──斬撃。間一髪回避したつもりが見事頬を掠めて赤の一線が走る。懐に潜り込んで胸元に両手を翳したが暴走しているのだとは一概に言っても頭が働かないという訳ではなく反射的に反応するのだろう再会した時と同じく電撃を反射するべく防壁を展開するそれに手を伸ばしたのを見てルーティは臨機応変に対応、フェイントに運んで拳を突き上げる。
「くっ」
けれどそれも結局顔を逸らされ掠めただけ──直後の回し蹴りを両腕を構えて受け止めたがこのまま構えていたのでは骨が砕けるものと察して攻撃を受け流した。息つく隙すら与えられず、ぐんと体を捻りもう一方の脚が蹴り出せばルーティは今度こそ受け止める選択を余儀なくされながら体の表面にばちばちと電気を帯びる。
電気の網を作り出して簡易的な防壁を作り攻撃の勢いを殺したがそれでもまともに食らえば体の軋む音が耳の奥まで響いて吐き気を誘った。このままいけば地面に蹴り倒されるところを瞬時に体を捻って踏み堪えた後右手で支えながら左腕を突き出して電撃を放つ。
「、!」
けれどそれも当然のように回避されたが最後。
引かれた拳が容赦なく。
「かッは……!」
駄目だ。諦めるような盤面でもないけど。
動きがデタラメな上、速すぎる──!
「ルーティ!」
ラディスは思わず名前を呼ぶ。
「ッ……大丈夫!」
地面に転がり伏せたが体に鞭打つように直ぐさま体を起こしながら答える。口端に滲んだ血を雑に拭い顔を上げればまさか慈悲を持って立ち上がるまでを待っていてくれるはずもなく。
「……!」
一体どんな攻撃が下されたのか、兎角目視できないほどの速度だったというのは違いない。凄まじい音と共に舞い上がる砂煙にラディスは血の気が引くのを感じて前足を踏み込みながら叫んだ。
「ルーティ!」