第八章
強い感情が。……流れ込んでくる。
痛い痛い痛い痛いよお兄様。
なんでどうしてごめんなさいごめんなさい、
──助けて。
「大丈夫」
ルーティは顔を上げる。
「僕が助けるよ」
体を弄り回された果てに繋がりを持ったお陰で不本意にもそれは全てが手に取るように分かる──これは恐らく正確には洗脳ではなく狂化なのだ。キーラを真似たのか否か兎角同じように自身の力を流し込んで支配したつもりなのだとしても肝心の混沌と闇の力があまりにも強過ぎて負の感情が溢れ出している。制御出来ていないのだ。
同じように狂化を受けた他の皆も確かに心配だけど今目の前にいるこの人が──パートナーがその力に蝕まれて苦しみながらその命を散らすなんてそんな姿は絶対に見たくない。
……大丈夫。
「ヴォアアァアアアアッ!」
怖くない。怖がらなくていい。
息を吸って吐いて。
向かってくるその人の姿が良くも悪くも都合よくスローモーションに映り込んだ。その人に繰り返し投げかけられた言葉を頭の中で思い返しながら一度閉じた瞼をゆっくり開けば青白い光が迸る。
「──行くよ、ウルフ!」