第八章
、そうだ。思い出した。
マスターとクレイジーがキーラと交渉をしていた時に突然襲ってきたメタナイトの目と同じ色──それが何を意味しているのかというのは否が応でも気付いた。それがダーズによる洗脳だったのだとして一体いつどのタイミングでというのはどうしても推測でしかないが恐らく自分達が亜空間に逃げ込んでいる間の出来事だろう。
例えば。隙を突いてお馴染みのあの黒い触手で深い闇に引き摺り込もうとして──気付いたキーラに光で払われたお陰で全員までは犠牲にならずに済んだがそれでも一部は、といったところか。
ともかく。
母の温もりのような心地の良い光に抱かれて熱に浮かされるそれとは訳が違う。
そんなものは見れば嫌でも分かるのだ。
「ウルフっ!」
襲いかかってきた彼の振るう拳や蹴りを順に回避して呼びかけるも通じない。直後飛んできた回し蹴りを鳩尾に受けて声にならない声──吹き飛ばない内にもう一撃を頂いて数メートル先。何度も体を打ち付けながら地面を転がり倒れ伏せる。
「ルーティ!」
ラディスは思わず声を上げた。赤い頬袋に青白い閃光をばちばちと走らせていたがその様子を目にルーティは急ぎ上体を起こしながら叫ぶ。
「攻撃しないでっ!」
……銃声。
「ルーティ……!」
逸れたから良かったものの。
「僕に、任せてほしい」
何を言われるより先に口を開いた。
「……大丈夫だから」