第八章



「ルーティ……」

不意に投げ掛けられた質問と苦しそうな表情と。緩く握り締められた拳と前後の様子の全てが過去の自分と重なって見えた。ラディスは思わず口を閉ざしていたがやがてゆっくり開く。

「それでも、俺は止めたよ」

ルーティは目を開く。

「彼らが納得するかどうかじゃない」

振り返る。

「俺は──戦士だったから」


誰を助けたいの?


それは。この謎の空間に転移される前に聞こえてきたダーズの問い掛ける声。

今になって思う。自分が本当は誰を──何を助けたいのか。そしてそのどれも必ずしも両立出来るものとは限らないということ。


欲張れないということ。


「……僕は」

ルーティが口を開きかけたその時だった。

「、!」

足音が響いたのだ。

それは確実に此方へ近付いてきている。

「……父さん」

味方だと信じたいけど。

一寸先も窺えない暗闇の中では。

「ルーティ」

静かに呼ぶ声に頷きながら立ち上がる。

直後、蹴り出す音がして。


──来るッ!
 
 
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