第八章
痛い。……痛い。
いたいイタイいたい痛ぃイタい、いたいよ、
「お兄様ァ……!」
右半身は原型すら残さない程に惨く潰れて凡そ正しく機能しているものとは思えない。左足はあらぬ方向に折れ曲がって辛うじて残った左腕だけで体を引き摺って進んでいる。どうしてそれで生きているのか分からないがただただ血溜まりの中をあてもなく。……いや。
愛しい兄の姿を探し求めるようにして。
「げぇ、ゲ、ほ」
軽く咳き込んだつもりが血の塊がぼたぼたと。口から吐き出して虚目になる。血溜まりにぼんやりと映り込む醜いこの化け物は誰だろう。浅かった呼吸は次第にしゃくりあげるように弾んで。
思考回路が黒く塗り潰されて。
握り潰されたかのようにぐしゃぐしゃになって。
「ゔぁあ、あ……っ」
──恐怖が襲う。
「ああぁあああぁあッ……!」
他より光に恵まれていないというだけで?
賢くないというだけで?
お兄様と血を分けたというだけで?
この世界に。
生まれ落ちたというだけで。
「ぁ、あ……ア……」
まるで泉のように湧き出る感情は。
紛れもなく。
「……ユルさない……」