第八章
ふっと照明が落ちるように──或いは蝋燭の火が掻き消されるように。場面は暗転したが程なくして明かされる。埃が充分に払われていない一室で用紙を捲るのはダーズだった。終始無言で暗く視線を落とした先には目の痛くなるような文字列。──神様に成れるのはひとりだけ。
彼の創造神と破壊神がそうだったように、それはどう足掻けど違えない。だからこそ周りが望んでいるように今最も期待されているお兄様が神様に成るべきなのに、お兄様は。お兄様ときたら。
おれなんかを愛してしまったがばかりに。
「ここで何をしている」
苛立ちを含んだ低い声に振り返れば。
「あ、……あのね」
迫る足音に用紙を慌てて元の位置に戻そうとしながら口を開いたけど弁解の余地もなく。
「勝手に入るなと言っただろう!」
ばちん、と。乾いた音。
「ぇあ……ぁは、は、……ごめんなさい」
笑顔を取り繕いながら顔を上げる。
「まったく」
男は用紙を奪い取って目を走らせると溜め息。
「お前のような愚鈍な子どもが見たところで何も分かりはしないだろう。そもそもお前は神に成ることを期待されてなどいない」
必死に持ち上げた口角がひく、と震える。
「諦めるんだな」