第八章



青く澄み渡った空を背景に絹糸のように繊細な金色の髪が風に靡く。神々が──いや世界が祝福するかのように大小様々な白の花弁が舞い上がるとそれはそれは目を奪われる美しさで。

「ダーズ」

小鳥の囀りのような心地の良い声音。

「おかえり」


やっぱり。

お兄様は今日も──綺麗だ。


「さあ。何を話していたのかキーラにも聞かせておくれ」

細くしなやかな腕が伸びて、飛び込んできた体を抱き留める。

それは仔猫のような柔らかな温もりで。

「ううん。おれって要領が悪いから」

その腕の中におさまることを許される自分など。

舌を打たれても致し方ないなと思いながら。

「教えを頂いただけだよ」
「……そうか」


見れば見るほど。

おれとお兄様は似ていない。


髪は朝整えても直ぐにうねってしまうし体だって華奢と呼べば多少聞こえはいいけれど痩せていて美しいとは言えない。同じ目の色、同じ背丈。同じ衣に身を包んでいるのにどうしてお兄様はこうも神に祝福を受けて生まれ落ちたのか。そして。


どうして。

おれ"なんか"が双子の弟なんだろう。


お兄様には才能があって非の打ち所がない。

あるとすれば。


「ダーズ」


ダーズおれを愛してくれているということ。


そんなまさか。

身に余る幸福を嘆いているつもりなど毛頭ない。


でも。見合わないんだ。

おれとお兄様は。


どんなに愛し合っていても。似ていても。


「愛しているよ」
「……うんっ」

光と影。

「おれも愛してるよ。お兄様っ」


住む世界が違うのだから。……
 
 
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