第八章
ばちんと。何かが弾けた様に。
「……大丈夫か?」
現実に引き戻される。
「そっか」
ルーティは自身の胸に手を置いて。
「だから聞こえるんだ」
妙な感覚はあった。他の誰にも聞こえていない声が纏わり付くように投げかけてくる。最初は夢だとか記憶の断片が流れ込んでいるものだと錯覚していた。あれだけ恐ろしい目に遭ったのだから、幻聴に見舞われているものなのだと。
けれど違った。声も情報も全てがリアルタイムで流れ込んできている。
この体は
「……?」
だからといって言葉を掛け合ってやり取りが出来るという話ではない。彼のふとした感情や言葉が流れ込んでくるというだけで彼にとってもそれは無意識でしかないのだろう。これが何か役に立つのかといえば首を傾げてしまうが何も分からないよりはマシであるかのように感じる。
……彼には。
彼らにはきっと──何かある。
「何でもないよ」
ルーティは安心させるように笑った。
「行こっか」