第八章
体が軋むような違和感。
何処か打ち付けたのだろうか──そんなことを思いながら宛てもなくゆっくりと歩く。歩けど歩けど景色は変わらないまま一分一秒すら長く感じる錯覚。ルーティは終始無言だったが耐え兼ねたのであろうラディスが口を開いた。
「……すまない」
「、えっ」
「嘘を吐いたんだ」
ルーティが目を向けるとそこには長い黄色の耳を垂れて落ち込む父の姿があった。
「あの時父さんはお前を叱っただろう?」
──感情論だけで動いていい問題じゃない。
「あはは」
ルーティは思い返して苦笑いする。
「例え嘘だったとしても本当のことだよ」
「うぅむ」
ラディスは納得がいかない様子だった。
「それともうひとつ」
ルーティは目を丸くする。
「お前の体は──治ったわけじゃないんだ」
……え?
「それって」
真新しいばかりの記憶がぶり返す。
愛おしそうに目を細める混沌と闇の化身のその目の前で──僕は。鎖に拘束された上で。この胸の深い所を黒い触手に。
耳に残る。
ぐちぐちぐつぐつと
「ルーティ?」