第七章
ルーティの予想通りキーラはマスターの背後に空間転移を使って一瞬で移動すると螺旋の羽を力強く広げた。光の粒子が飛び散り、輝く様はまるで白鳥が湖で水浴びをするようなそんな美しい光景だったが見惚れている時間もない──ルーティが思わず身動ぎをすると勘付いたカービィは敢えて力を込めて抱き留めた。
「、離して!」
「だからって何も出来ないでしょ!」
一方でキーラは此方の気など知らずマスター諸共羽で己をゆっくりと包み込んでいく。
「でも!」
誰を助けたいの?
──幼く響くこの声は。
「えっ?」
この世界かな? 神様かな?
それとも。
……大事な大事なパートナー?
「、ッ!?」
ルーティの仕業ではない──けれど確かに電気のようなものが神経をほんの一瞬麻痺させてカービィは思わずルーティの体を解放してしまった。ともなれば必然的に腕に抱えたラディス諸共地面に真っ逆さまとなってしまう訳で。
「うわぁあぁあっ!?」
出来るものなら。……やってごらん。
「ラディス、ルーティ!」
叫んで、目で追い振り向いたつもりだった。
「……は?」
見当たらない。……何処にも。
「消えましたね」
そんな、瞬きを一瞬許されただけの時間で。
「カービィ」
……跡形もなく?
「ラディスさんも一緒だろ?」
「それはそうだけど」
カービィは解せない様子で眉を顰める。
光の化身と混沌と闇の化身がそれぞれ創造神と破壊神を連れて消えた。そして何故か鼠の親子も。──神様の考える事は分からない。
いつの間にか地上も静まり返っていた。
指揮を取る者が居ないともなれば別段戦う理由もないのだろう。スマッシュブラザーズと謳われた戦士たちが自身の意思ではなく他の意思で戦いをやめるなどお笑い種というものだ。
「信じようよ!」
受け売りのようなその言葉を。
カービィはそこに居たはずの虚空をじっと見つめながら拳を握って返す。
「……当たり前」
さぁ。やってごらん。……人間。
深淵の闇の中から導き出せるものなら──