第七章



けけけ。けけけけけけ。

怪しい笑い声を頭の奥にまで響かせながらダーズはクレイジーを引き摺り込むように背中から闇の中へと呑み込まれていく。

「戯れ事を」

キーラが瞳を紅く瞬かせると幾つもの光の弾が放たれた。けれどダーズを守るべくして闇の中から飛び出した触手が身を挺して阻んで。

「本気だよ」

ダーズは目を細める。

「次会った時が最期だからね」

浮かべた笑みは深い闇に溶けていく。

「またね。お兄様」


……愛してる。


「、……」

ダーズを完全に呑み込んだ黒く渦巻く空間は蝋燭の火を掻き消すようにふっと消えた。キーラは気配が消えた後も暫く元居た場所即ち虚空を眺めていたが不意に気配を察知すると薄青の防壁を広く展開。その直後。

「ダッシュアッパー!」

神器剛腕ダッシュアッパーを用いて死角から仕掛けたのはピットだった。彼の纏う真っ白な衣はこの戦いの中で黒い煤や破れた跡が目立つような形となってしまったがそれでも何とか隙を見つけて駆け付けてきてくれたらしい。キーラが冷めた目で見下しながら螺旋の羽を振るうと飛翔の奇跡を与えていた後衛のパルテナが杖を大きく引くのでピットはそれを回避。

「助けなきゃ」

ルーティは無意識の中でぽつりと呟く。

先程より熱が冷めた様子であるキーラに戦いの意志は見られない。ダーズの発言を約束するのなら彼も一時撤退を選択するはず。マスターを助けるのは今このタイミングしかない!
 
 
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