第七章
混戦の一言だけで片付けられる状況ではない。
ダーズはキーラを振り返るとその背後に展開させた暗い紫の魔法陣から無数の赤紫色の光弾を放った。そのまま螺旋の羽を撃ち落とすまでには至らなかったがあからさまに突撃の速度を落としたその隙、ダーズが肩を竦めて嗤えば合図のように巨大な弾がその頭上に生成されて遂に螺旋の羽を撃ち落とす。だからといってラディスとルーティを守る為に出てきたはずもなくダーズは爆撃を背に振り返ると両手を後ろに回して笑いかけた。その笑顔に見惚れる間もなく死角から振るわれた触手が容易く二人を足場から払い落とす。マスターは即座に飛び出した。
「マスター!」
ラディスの呼ぶ声に応えない。マスターの体は白い光に包まれてそれが膨張したかと思うと先程と同じ巨大な白手袋の姿に変化した。落ちるルーティとラディスの体を手の甲で掬い上げて難を逃れたかのように見えたが四方八方から紫の火柱が突き出て襲う。それを右へ左へと回避したが混ざるような形で追ってきた白い光の一撃を躱せない。──下から上へ。──貫通。
「兄さん!」
墜落する白手袋は裾から糸が解けるようにして──やがて人の姿であるマスターを解放する。ともなればまさか兄を深愛しているその弟がそれを黙って見ているはずもなく自身の深手など顧みずにクレイジーは飛び出す。体力も残り僅かである中同じく墜落するルーティとラディスを助けるまでの余裕があるはずもなく迷いなくマスターに手を伸ばす。
もう少しといったところで阻んだのは。
「ぁ」
尖端を鋭利に形状を変化させた。
一対の螺旋の羽──
「クレイジーッ!」
ルーティの腕の中でラディスが叫んだ。
意識の回復したその兄は光の化身の放った羽に貫かれる弟を確かに目にしたが。
手を伸ばしたが。……届くはずもない。
「っ、し」
墜落するルーティの体を空中で受け止めたのはカービィだった。切り傷や擦り傷の見られる彼だがどうにか抜け出す事に成功したらしい。
「、カービィ」
「分かってる」
カービィはゆっくりと空を見上げた。