第七章
一撃を直に受けたクレイジーの体は全ての機能を停止したかのように崩れ掛かるも捕らえた鎖が墜落を許さない。ダーズはじいっと見つめていたが不意に気配を感じ取ってその目だけを其方へ寄越した。刹那、飛んできたのは光の槍。容易く躱すも髪の毛がはらりと落ちた。
「わぁ」
様々な武器を模した光の群れが次の瞬間ダーズを守るようにして交差した触手に突き刺さる。ダーズはその後ろから顔を覗かせて。
「!」
目前にまで迫っていたのは。
巨大な白手袋。
「弟を返してもらおう」
容赦なく。予想に反した大きな姿で立ちはだかる触手ごとダーズの体を拳を握って殴り飛ばせば。即座その白手袋は手首部分からさらさらと白い粒子となって──その中から元の人の姿であるマスターが現れる。弟を捕らえる鎖を一つ一つ睨み付けて打ち砕いたが。
「、にいさ」
きっと今にも千切れそうな一本の糸で繋ぎ止めていた意識の中クレイジーは声を漏らす。
「あいつらを」
マスターははっとして振り返る。
「小賢しい」
丁度そのタイミングだった。
キーラは標的をルーティとラディスに映して。ゆっくりと手を翳す。小さく舌を打ったマスターは即座に右目を青く強く瞬かせて金色の光の盾を双方の間に隔てるように創り出したが直後視界が歪んだ。神力不足によりこれまでより脆く創られたそれはキーラの螺旋の羽を受け止めきれない。無論見ているだけの話もなくルーティとラディスは同時に電撃を放ち応戦する。
「だめ」
間に割り込んだのは。
「お兄様が他の誰かを視るなんて」