第七章
「父さんも同じ事をしたと思う」
ルーティは腕の中のラディスを見た。
「当たり前じゃないか」
「、でもさっきは」
「被害者の手前だったからな」
それを聞くとルーティはこの状況にも関わらず父親らしさを感じて小さく笑った。
「……父さんがマスターとクレイジーを助けた時もこんな感じだった?」
「はは。そうだな」
ラディスは懐かしそうに目を細めたが、
「……まずい」
異変に気付いて目を開く。
「父さん?」
「押されている」
ルーティは釣られて視線の先を見遣る。
「アハハハハッ!」
不意に虚空に現れた濃く渦巻く紫から飛び出すダーズにクレイジーは眉を寄せる。触手を束ねて作り出された巨大な金槌が襲うとクレイジーの前方に青い防壁が現れてその攻撃を防いだ。けれど受け止められたのは一撃のみで防壁は即座に砕け散り粒子と化す。救いの手を差し伸べた兄をちらりと振り向けばお馴染み創造の力を駆使して武器を生み出し応戦していた。
「誰を見てるのぉ?」
囁くような幼い声に向き直ったと同時に触手の突撃をエネルギーピラーで弾く。その隙を縫って至近距離にまで顔を近付けたダーズは眼孔を見開きながら。
「どっちを見てるのぉ?」
エネルギーピラーを振るうも間に合わず。
「──お兄様は渡さないよ?」