第七章
瞬時にキーラの目の色が青から赤に転じた。
「御冗談を」
口元には変わらず笑みを残して腕をゆっくりと薙げばその後方に複数の小さな白色の魔法陣と最後それらを遥かに上回る程の大きな魔法陣が展開。それぞれの中心が淡く光を灯していけばマスターは右目の青の灯をより一層濃く瞬かせその前方に巨大な光の盾を創り出した。
「年端も行かぬのは御兄弟とて」
「直ぐに愚図る餓鬼と一緒にしない事だ」
売り言葉に買い言葉。程なく撃ち出された光の群れは悉く光の盾を前に散っていく──
「ルーティ!」
目を奪われていたばかりに反応が遅れた。ポケモンの姿とはいえ鳩尾に頭から突っ込むような勢いで飛び込んでくるのだからルーティはその場に見合わない間抜けな声を漏らす。
「ふぐぅっ、と、父さん!」
「無事でよかった!」
親というものは子の危機とあらば世界の裏側にだって飛んでいくものなのかもしれないが混戦中によく被弾もせず飛び込んでこられたものである。無茶をするなぁと苦笑いを浮かべたが口にまではしない。似たもの親子である。
「……終わりそうにないね」
結局一歩間違えれば怪我どころの騒ぎではない仕打ちを受けただけの話に終わってしまった。ルーティはラディスを腕に抱きながら目で追ったところで何が起こっているのか分からない高度な戦いというものを眺めた。地上では変わらず銃声や剣戟といった物騒な音が鳴り止まず。
「……ルーティ」
その様子を目にラディスは小さく息を吐き出す。