第七章
飲み込もうとした唾も乾く程に。
眩暈のするような殺気と視線と言葉の棘に。
「、ちが、う」
ルーティは声を振り絞る。
「痛くない愛情表現だってあるんだよ」
大丈夫。
「君たちにどんな事情があったか知らない」
怖気付くな。
「でも。本当は」
ルーティは双眸に意志を灯して言い放つ。
「本当はもっとちゃんと向き合いたかったはずだよ! 」
差し向けられた螺旋の羽が。
触手を斬り落としたのは直後の出来事だった。
「鼠風情が」
紅色の双眸が睨み付けている。
「知ったような口を──」
落ちる。
「──やれやれ」
思いの外着地点は近かった。
「分かりやすいことだ」
ルーティの体を受け止めたのは平らなガラス板のようだった。透明だが淡く金色に光るそれは吊るされてもいないのに浮いている。
「も、もう少し柔らかい方がよかったんだけど」
「地面の方が柔らかいと?」
ルーティは言葉を詰まらせる。
「助けてもらった分際で生意気なんだよ」
「す、すみません」
打ち付けた箇所を摩りながら立ち上がれば。
白の双神がそれぞれの目を擡げた。
「さて」
マスターは白手袋の裾を甘く噛んで引きながら。
「聞き分けの悪い子供らには少し灸を据えてやらなくてはな」