第七章



……伝えないと。

なるべく。刺激してしまわないように。

「ふたりは兄弟なんだよね」

緊張に口の中が乾く。

「ダーズは」

ゆっくりと紡ぐ。

「キーラのことが好きなんだよね?」

焦るな。

「愛しているんだよね?」

慌てるな。

「どうしてこんなことをするの」

あくまでも冷静に。

「こんなの、」

慎重に。


「おかしかった?」


どくんと心臓が跳ねた。

「おれ、間違ってるかなぁ」

ダーズはゆらゆらと頭を揺らしながら。

「愛情表現って色々あるよね。飽きるまで話したり髪や手を触ったり一緒にお出かけしたり玩具で遊んだりそれこそ数え切れないくらい」

不意に止まる。

「思うんだ」

──次の瞬間には、目の前。

「愛しているひとを自分の手で殺めるのって──ひょっとしてひょっとしたら、最上級の愛情表現なんじゃないかって」

にんまりと嗤う。

「最後の体温も言葉も視線も感情も何もかもこの手で止めてあげられるんだ。考えてもみて? そんな機会って何千何万年と生きてきて普通はないよね有り得ないよね。だって大抵の人間は愛する人と生きることを選ぶのだから」

ふわり浮遊しながら回り込む。

「他の人間と同じ愛情表現なんて。二番煎じで、量産型で──愛していると謳う癖に宣う癖に! それってものすごく失礼なことだと思わない?」

ひと呼吸置いて。囁きかける。

「ぼくの愛情表現はね。間違ってないよ」

動悸。

「ねぇルーティ」

彼の顔が見られない。

「何が言いたいの?」
 
 
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