第七章
駄目だ。聞こえていない。
ルーティが顔を顰めたその時だった。
「うわあっ!?」
無防備なその背後の虚空に丸く円を描いて闇が滲んだのに気付かない。ゆっくりと忍び寄ったそれはまるで食虫植物のようにルーティの体を一気に捕まえると闇の中に引き摺り込んで。
「ルーティ!」
声を上げたラディスが咄嗟に電撃を放つも闇は収縮して跡形もなく消えてしまう。
「あははっ」
ダーズがキーラから離れるとふたりの間にぽっかりと落とし穴のように丸い円が口を開いた。その中から放り出されたが即座片方の脚を追ってきた触手に絡め取られ吊るされたのは。
「さっきぶりだねえ」
ダーズは目を細めて笑う。
「ルーティ?」
一度でも発言を誤れば命令次第で上にも下にも放られそうな状況下。第一に考えるべきは自分の命なのかもしれないがこんな形で接触できるなんてと思わぬ機会に思考を巡らせるルーティに。
「さっきからなあに?」
ダーズはかくんと首を傾ける。