第七章
その願いを易々と聞き届けてくれるものとは当然思っていない。けれどそれでも上空で戦う彼らに訴えかけるには頼る他なかった。
「いいよ」
そう思っていたのに──ルーティは疑問符と感嘆符を散らして弾かれたように顔を上げる。
「ね。兄さん」
「そうだな」
思いの外あっさりとしている。
「やだな。罠にかけるような場面でもないだろ」
ラディスの視線を受けてクレイジーは否定。
「僕たちとしてはそれであいつらが攻撃の手でも緩めてくれりゃ対処しやすいし」
ルーティはもう一度空を見上げた。……あの激しい攻防戦の中へ飛び込めば無事で済まされるはずもない。まさか彼らも空を飛ぶ術を与えてくれるわけもないし。せいぜい足場くらいなものか。
「……お願いします」
それでも。
後に引くわけにはいかない。
「だってさ」
クレイジーが視線を向けるとマスターは小さく息を吐き出し指を鳴らした。途端に転がっていた瓦礫や柱の一部などが念力のようにゆっくりと持ち上げられたかと思うと螺旋状に高く並んで。
「行こう」
ラディスの言葉に頷いて。
「ありがとう!」
ルーティは急ぎ足場に飛び移っていく。
「僕たちも行こう」
「……ああ」