第七章
ルーティは深く頷いてもう一度空を見上げる。
現在。キーラとダーズは地上の事など気にも留めず激しい攻防戦を繰り広げている。兄を慕う反面憎しみに心蝕まれる弟と、弟の全てを蔑視する兄──事情をじっくりと訊きたいところだが生憎のことそんな状況では。兎角一度彼らを止めないことには洗脳された戦士たちが攻撃の手を緩めるといったこともない。犠牲が出てしまっては遅い。
「──ルーティ!」
父の呼び声に振り返れば闘いによって倒れた柱や瓦礫を足場に先程までいた建物の上を目指すラディスの姿があった。ルーティは頷いてその後を追う。彼らがいるのは上空だがまずは少しでも接近しないことには始まらない。
被弾がないはずもない──ダーズが一度距離を取ってその眼孔を力強く瞬かせるとダーズの前方に薄い赤色の障壁が展開してそこから赤い弾丸が幾つも撃ち出された。当然黙って防御するはずもなくキーラは静かに腕を払うと防壁を一度解除して空間転移を使いながら転々とそれでいてダーズに接近する。目前にまで迫った時、キーラを纏う螺旋の羽が形状を鋭く変化させて突き刺そうとダーズを襲った。けれどその意図に気付かないはずもなくダーズが口元に笑みを浮かべると黒の触手が攻撃を受け止めて。
「あは……お兄様ったら手加減しているの?」
「甚だしい。笑えない冗談というものだな」
一方。ルーティは建物の天辺に辿り着く。
「キーラ! ダーズ!」
当然応えてくれるはずもなく、一度止まったかのように見えた攻防戦は再開される。
「呆れた」
ルーティは振り返る。
「説得しようってマジの話だったんだ?」
「、クレイジー」
「何れにせよそんな場所から届く筈もないな」
降り立つ双子にルーティは拳を握り締める。
「……僕を」
意を決して発言する。
「ふたりの所に連れていってほしい」