第七章



キーラは目を細めて笑ったまま。

「……あれ」


答えない。


「どうかしたの?」

クレイジーは追い討ちをかけるように。

「兄を思い慕う弟の気持ちも分からないの?」

畳み掛けるように。

「可哀想」


ばきん、と。

視界の端に並べられていた壺が割れた。


「……嗚呼」

そっと瞼を開いたキーラの目は。

「よりにもよって」

赤く。

「敬愛する神々にあれを見られるとは」


……紅く。


「不知で鈍間で脆弱で」

キーラは淡々と。

「この兄に似つかわしくない愚かなる弟を」

目を細める。

「……ダーズを」
 
 
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