第六章
そういえば──ふたりは僕がダーズとの戦闘で受けた傷を治してくれたみたいだったけど。
どうやったんだろう。物の序でみたいに色々と覗かれてるけどまさか体を切り開いたとかじゃないだろうな。鯵の開きじゃあるまいし。
「対する兄は弟に関して一言も語らなかった。加えて双方が光と闇という完全なる対だ」
「対、という点では僕たちも似てるけどね」
クレイジーは短く息を吐き出す。
「あいつが何したか知らないけど要はトラウマ植え付けられてるってことでしょ」
お兄様も居たからなにも怖くなかった。
ボクはお兄様を愛しているから。
──お兄様を殺さなきゃ。
思い返す。直向きだけれど報われない愛情──そんな風に想像した。
「顔合わせることすら危ういと思うけど」
「あんなに会いたがってたのに」
「仲人しに来たんじゃねーんだぞ」
「クレイジーだったら会いたい?」
「愚問だろ」
彼なら兄に想われていようがそうでなかろうが全てを破壊してでも会いに行くことだろう。
「引き篭もりと一緒にするなよ」
「マスターは?」
「探しはするが会おうとは思わない」
「がーん」
「当然だろう」
クレイジーの反応にマスターは溜め息をひとつ。
「愛しているのだから」