第六章
じくじくと。顔の右半分が焼けるように熱い。
ゆっくりと瞼を開くと暗闇だった。そろそろと顔を上げれば遠く光が窺える。鋭く刺すような冷気が体温を自由を奪って意識が朦朧と。
「……お兄様」
きっと来てくれる。
お兄様なら来てくれる。
「お兄様」
繰り返し呟く。
「早く……迎えにきて」
安寧の夢から醒めなくなる前に。
「う」
小さく呻いて──瞼をゆっくりと開く。
どうやら夢を見ていたようだ。幼く寂しい声はダーズのものだった。触手で体を弄られた際に記憶が流れ込んできたのだろうか。
「ルーティ!」
「わっ」
体を起こして程なく飛び付いたその人のお陰でルーティは再び地面に倒れ込んだ。いたた、と呻いていると視界に白い翼が映り込んで。
「──ピット!?」
驚きのあまり痛みさえ吹き飛んで体を勢いよく起こす。見間違いなどではなかった。
「元に戻ったんだ……!」