第一章
視界を妨げていた雷が途切れる。
「……!」
目を開いた。
「はあぁああッ!」
次の瞬間飛び出してきたのはルーティである。奴らは空中では身動きが取れないはず──実は地上から放たれた雷によって互いに妨げられていたあの瞬間、ルーティはウルフの構えた腕を足場に蹴り出して両腕を自身の後方へ伸ばし、稲妻を放つことで加速。雷がちょうど途切れたそのタイミングで殆ど無防備に近い姿勢だったマスターに突撃を仕掛けたのだった。
「驚いた?」
呆気なく拳は受け止められる。けれど茶化して笑う余裕まではなかったのか無言で攻撃をそのまま脇へ流された。すかさず蹴りを繰り出すがそれもその為だけに展開された防壁が阻害。連続して打ち出せどもどの攻撃も受けては流され回避と防御。全て見切られている。
「何でもお見通しだね」
「当たり前だろう」
冷めた声音で返すその人に。
「本当に?」
にっこりと笑って──右手を掴まえる。
「ウルフ!」
まさか。と思った時には遅く──影が差す。
「、ッ……!」
頭上から振り注いだ攻撃が首後ろを直撃すると同時に右手を解放された。墜落する体を地面が受け止めて砂埃が舞い上がる。滞空時間が長く感じていたのも気のせいではなかった様で糸が解かれたようにルーティとウルフの体も重力に従って墜落した。双方共に空中で転じて着地を終えると舞い上がった砂埃の幕を見つめて。