第六章
……呼吸が乱れている。
「マスター、クレイジー」
ラディスは心配そうにルーティの顔を覗き込みながら言った。今現在自分の息子は苦しそうに眉を寄せて呻いているというのに見守る事しか出来ない。己の無力さを心の中で嘆いていると歩み寄ってきたカービィが地面に仰向けに寝かされているルーティの額にそっと触れた。
「これ。大丈夫なの?」
クレイジーはマスターの視線を受けるとそれに従うようにルーティの傍らに跪いて首筋に手を当てると顔を顰めて呟いた。
「……兄さん。一度視た方がいいかも」
マスターはゆっくりと歩み寄るとクレイジーの隣に跪いてルーティの額の上に手を翳した。青白い光がぼうっと灯りカービィとラディスは邪魔になってしまわないように一定の距離を開けながらその様子を見守る。
「……混沌と闇がどうとか言っていたか」
マスターは呟く。
「ルーティは大丈夫なのか?」
「大丈夫じゃないっしょどう見ても」
問うラディスにカービィは現実を突き付ける。
「状況くらいは説明してもらえる?」
クレイジーは立ち上がる。
「……僕たちが駆け付けた時。こいつは谷底に潜んでいた子どもに捕らわられていた」
ラディスは疑問符を浮かべて。
「子ども?」
「混沌と闇の化身。名前は……なんだっけ」
「ダーズ」
マスターは息を吐く。
「とにかくこいつは呪いの類いだな。一目には分からないが臓器の軽い損傷と設定含む内部の情報が弄り回されている。このまま目覚めれば精神疾患を患う可能性が高い──」